Power BI道場 需要予測の基本の考え方と手法を解説

Power BI
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Power BIを使って需要予測する手法について解説していきます。

需要予測というと今はAIや機械学習がブームです。
現場の勘に頼った方法をやめて、論理的に予測するという考え方です。

しかしそんな高度な技術者は社内にいないし。。。

と考えている方に質問です。
AIや機械学習をできる人が一番知りたい情報は何でしょうか?

実は「現場の勘」です。
Power BIを使う強みは「現場の勘」を磨くことです。
この記事ではPower BIでできる基本的ですが重要な分析手法を書いていきます。

需要予測はどうやって行うのか?

現場の勘であれAIであれ需要予測の方法は同じです。
「相関するパラメータを探す」
という作業です。
この値が上がると受注があがるというパラメータを探すのです。

例えば競馬で短距離のレースの1位を予想するとします。
競馬場にいるおじさんはなぜか馬の脚の太さを測っています。

これは
「短距離走が強い馬は瞬発力が強い。そのため筋肉が発達している」
という経験則を元にしていたからです。

現場のデータ分析の役目はこの競馬のおじさんのようになることです。
経験則と予想から相関パラメータを探し出すことを行います。

いくらAIの達人でも予備知識がなければ馬の脚の太さを測ろうなんて思いもつきません。
相関関係のあるパラメータを探すのはデータ分析で非常に大事な作業です。

AIなどの数学的な手法は相関関係を見つけた後、役に立ちます。
「脚の太さが1cm伸びると2秒早くなる」
といったように、計算で具体的に結果を予測する技術です。

需要予測する時の作業ステップとボリューム

1.データを集める
  データがないと作業は始まりません。
  データベースの知識が役にたちます。

2.相関するパラメータを探す
  需要と関係しそうなパラメータを探します
  Power BIはこの作業に役にたちます

3.予測する
  ほとんどは、1や2の段階で挫折してここまでたどり着きません。
  回帰分析・機械学習を使って予測します。

データ集めと相関パラメータを探す作業はとても大切です。
多くの作業時間はこの作業に使うことになります。

相関パラメータの探し方

「では相関パラメータを探して。」

と言っても、何もヒントがないと探すのは難しいと思います。
ここではよくあるパターンを書きますので参考に探してください。

過去の実績データから傾向をみる

受注予測をする時に過去の受注データを見ます。
分析対象の数字の過去の推移を見るのは基本です。
Power BIでデータを見る方法を5つ紹介します。

*Power BIの折れ線グラフの作成はこちらの記事を参照してください。

折れ線グラフで見る

売上や受注を時系列に推移した折れ線グラフにします。
グラフを見ることで受注が増えているか減っているかで予測します。

年別の折れ線グラフを見る

前年同期比で比べる方法です。
このグラフですと年々の変化がわかりやすくなります。

年別の折れ線グラフの作り方

移動平均で傾向を見る

時系列のデータは季節性があるのがほとんどです。
・半袖は夏に売れるけど冬には売れない。
・四半期末の受注は多いけと、最初の月は受注が少ない
・平日は売上が少ないけど、土日は売上が多い。
といったようなことを季節性といいます。

予測する時に、この季節性があるとわかりにくいです。
上のグラフのように前年度と比べればわかりやすいですが、
1年後と比べているのでは情報が遅すぎます。

この季節性を取り除く一つの手法が移動平均です。
四半期単位に増減がある場合は3ヶ月の移動平均を使います。
週単位に増減がある場合は7日の移動平均を使います。

四半期による季節性をなくすために3ヶ月の移動平均をとると次の図のようになります。
こうすることで受注の傾向がわかるようになります。
*最初や最後の月はおかしなデータとなります。

移動平均の作り方
傾向線の機能を使って見る

Power BIには傾向線という機能があります。
これは単回帰分析という方法です。
一番もっともらしい傾向の直線を引く機能と覚えておけば大丈夫です。

傾向線の作り方
予測を使って傾向を見る

将来の予測の線を引きます。

予測の機能は難しく言うと季節変動変数を含む回帰分析です。
傾向線に加えて、季節変動のパターンの考慮もした線を引きます。

灰色が予測です。

予測線の作り方


以上が過去の実績から傾向を見る方法です。
データ分析するときには必ず見るので、上記の5つから一番わかりやすいのを使ってください。

他の人の予想データを使う

次に有効な需要予測の方法は外部のデータや他の人の予想データを使うことです。

 ・全体指標や市場規模予測
  総務省の統計局のようなデータを使います。
  消費動向指数が受注に関係しそうと思ったらそのデータを使用します。

  各業界で市場規模の予測をしていることは多いです。
  自分の所属している市場のデータを探します。
  業界内の自社のシェアから需要予測ができます。

 ・ライバル企業の予測
  上場企業であればライバル企業も業績予測データを発表しています。
  その内容を読んで予測の参考とします。

 ・自社業績のアナリストの予測
  上場企業ですと株価の予測のため分析記事がかかれていることがあります。
  その記事を参考にします。

予測の記事には
 「人工が増えているので受注が10%あがる」
といった相関パラメータについて書いてあります。
この相関パラメータのデータを取得して、グラフに変換して確認していきます。

先行パラメータは特に大切な指標です。
先行パラメータはこのパラメータの数字が上がると数カ月後に自社の受注が増えるという関係のあるパラメータです。需要予測に役にたちます。


自社の受注金額と消費動向指数を線グラフにしたサンプルです。

他の人の予測データを利用する時は予測の根拠を必ず確認してください。
前提が崩れると予想と違う結果が返ってきます。

“脚が太いほど短距離が早い”という事例を考えた時に、
「ボディビルダーは短距離が早い」
という結論は間違っているのはわかると思います。

これは瞬発力を高くするため筋肉が発達しているという前提条件を満たしていないためです。

会社内のデータから探す

会社内のデータのメリットは、
 ・パラメータ値の増減を自社できめられる
 ・詳しいデータをとることができる
ということです。

散布図で確認する

受注を伸ばすために広告費を100万円使います。
といったようなプレゼンテーションを社内で聞くと思います。

ですが実際にデータの裏付けがあって話している人は少ないです。
実施後の効果をデータで確認する人はさらに少ないです。

広告費と受注金額に関係があるのか確認するには、散布図を使います。
売上を縦軸にして広告費を横軸にして月々の結果をグラフにします。

この図を見ることで広告費を10万増やしたら受注は50万増えそうだということが想像できます。
このように受注と関係のありそうなパラメータを確認していきます。

相関図を確認する時に他のパラメータの増減が影響することがあります。
企画に参加できるのでしたら分析しやすいデータを手に入れます。
広告費でしたら、特定商品のみ広告を出して同傾向の商品との受注の違いを比較する。
といった形です。

相関関係のありそうなデータが見つかったら散布図で確認するというのがセオリーです。

下の図ではPower BIの傾向線を使いましたが、あまり信用できません。
グラフをみると2つのグループに分類されているのがわかります。
2つのグループの違いは何なのかを確認し、別々に分析します。
*このサンプルの場合上のグループは4半期末のデータです

散布図の作成方法はこちらの記事で紹介しています。
営業活動から探す

営業の見込み受注金額から推測する方法です。
各営業マンに予想を聞くのもいいですが、人によって誤差が大きいです。
データ分析的に確認するには次の方法があります。

営業のステップを確認する
1.電話でのアポイント実施
2.訪問し担当者との打ち合わせ
3.見積り作成
4.受注

次のステップにすすめる割合を過去の実績から求める。
 電話でコンタクトした顧客の50%に訪問できる。
 訪問した顧客の50%が見積りをする
 見積りをした顧客の50%から受注できる
というように確率をだします。

ここまですれば、今どのステップに何件あるかで計算で受注予測を出せます。
例えば訪問状態の顧客が64件あった場合16件の受注がとれると予測できます。
64件 x 50% x 50% = 16件

このデータ確認に便利なPower BIのグラフはフィルターです。
このグラフを使うことでどこのステップでの離脱が多いかひと目でわかります。

営業活動からの分析でいい点は、営業活動の改善に使えるところです。
どこで顧客が離脱しているかわかりやすいので、改善するのに役にたちます。

関係部署とデータを共有して、実態を予測に合わせる

最後に紹介する手法は実態を予測の数字にあうように変えるということです。

営業の方であればノルマに達していないと猛烈に働いて、ノルマを越していたら翌月の受注に伸ばしたりするような調整です。

これは部署間同士でも使えます。
営業が調達や工場の部門と情報を共有することで予測と実態を近づけることができます。

需要予測する目的で一番多いのは無駄のない部材調達と生産をすることです。
・営業の予測が大きすぎて部材があまって損失がでた。
・逆に予測が低すぎて製品がなく受注の機会損失がでた。
といった無駄です。

逆に言うと、この無駄がなくなれば需要予測は外れていても大きな問題にはなりません。

この解決手法として
 Power BIでレポートを各部で作り、それを関係部署で共有する
が有効です。

えば調達で一番気にするのは購買リードタイムの長い部材の調達です。
その部材が使われる製品の需要予測を一番知りたいのです

その情報を情報共有できていれば、
 ・調達:受注が予測に届きそうにない時に機敏に発注量を調整できる
 ・営業:部材の調達が難しそうな時に、代替製品の受注に力をいれて受注数をコントロールできる
といったような事が可能になります。

自分が調達の担当者だったと想定してみてください。
営業から結論だけ言われて調達したときは、
「営業の予測どおりに調達したのだから、部材が足りなくても自分の責任ではない」
と思うでしょう。
ですが、情報を与えられて自分で調達数を決めた時は違います。
部材が足りない場合は必死になって調達手段を探すでしょう。

その点でデータ共有はたいせつで、Power BIはその情報共有に大きな役割をはたすでしょう。

まとめ

Power BIを使って需要予測する方法を紹介しました。
Power BIのいい点はデータを視覚的にわかりやすいことです。
その特徴を活かして相関関係のあるパラメータを探します。


過去の実績データから傾向をみる
線グラフを使って確認します。
Power BIの予測機能を使うことで、回帰分析の結果や予測を見ることができます。

他の人の予測データを使う
同業他社や自社に対するアナリストの見解を参考にします。
予測の根拠を確認するのが大切です。
根拠となっているパラメータを集めてグラフで確認していきます。
関係性を見るには散布図を使います。

会社内のデータから探す
営業で、各ステータスに何件案件があるかで需要予測します。
フィルタのグラフを使うと視覚的にわかりやすいです。
この分析は営業改善にも役立つので取り組む価値はあります。

実態を予測に合わせる
自分の部門の情報を関係部署と共有します。
情報共有することで無駄を少なくすることができます。

以上Power BIでできる需要予測です。
「こんな簡単な分析でいいの?」
と感じた方も多いと思います。

確かに本格的に需要予測するには回帰分析や機械学習を使います。
ですがその分析をする前に必ず行うのはデータを集めて相関パラメータを探す作業です。
この作業にかなりの時間とお金がかかります。

この記事の内容までできていれば回帰分析や機械学習を発注しても大幅に費用を減らすことができます。もちろん自分で勉強して分析しても大丈夫です。
今ですと簡単に分析できるツールや環境が整ってきています。
高精度の分析結果を求めなければ専門家でなくても挑戦できるようになっています。

Power BIは相関関係を確認したり、わかりやすく表現するのに適しています。
有効活用して需要分析に役立てていきましょう。

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